2023年3月3日、もともと倉庫として使用されていたMEGAドンキ狸小路本店B1のとある空間にオープンした「酒屋Bar HANASAKU」。
Barスタイルの酒屋という一風変わったスタイルで、老若男女・お酒初心者からプロの方まで幅広い層から愛されています。
お店を展開する株式会社HANASAKU代表の乾一等さんは蔵人としての経験もあり、お酒とお酒を楽しむ方への特別な思いを持っていました。
酒蔵での経験がお酒のおもしろさを変える
「当初はお酒大好きな若者だったんですよ」と振り返る乾さん。
転機となったのは、お酒を提供するにあたり、どこかでプロにならなければならないと考えたときでした。
ソムリエや唎酒師が多くいる中で、その人たちがやったことがないことは何か…
当時、清掃員を募集していた千歳鶴の門を叩きます。
そこで出会ったのは、昔ながらの職人気質の親方や杜氏さん。あまり話しかけるような雰囲気でもなく、物怖じしてしまう人もいた中で、積極的にお酒への熱意と真剣さをぶつけていた乾さんは、麹室や酵母室などを渡りながら、お酒造りに携われるようになり、2年以上の経験を積みます。
実際に経験して感じたのは、「興味本位や好きという気持ちだけでは到底できないこと。」
親方は特に温度管理にうるさく、常に0.1度単位の調整をしているそうです。そんな姿を間近で見ていて「蔵を出た後は、お酒をぞんざいに扱えなくなりました。感謝とか大変さがちらついて、美味しく出すのがせめてもの恩返し」と話してくれました。
店内にいると、まさにこの想いが随所に散りばめられていることがわかります。
同店では、生酒や火入れに関係なく、すべての日本酒を酵母や酵素の活動を抑える温度に設定した冷蔵庫で保管しています。提供後、エアーを抜くことも怠りません。
「蔵にある時に0.1度単位で管理されてるものが、蔵から出て瓶詰めされて、いくら火入れしているからって店頭に並んだ時点でざっくりな管理でいいわけがないと勝手に思ってる」。酒蔵での経験あってこその言葉だと感じました。
酒蔵から直送され、厳しい温度管理の下、保存されるお酒は、鮮度という面でどのお店にも劣らない、本当の意味で上質なお酒を味わうことができます。
飲むことが好きだった若者が、酒蔵時代を経て、そのお酒に関わった人たちの人生も含めて、「お酒」という存在そのものに興味を抱くようになります。
どうやったら楽しくお酒を知ってもらえるか
「酒屋Bar HANASAKU」では、単品飲みプランのほか、原価飲み比べプラン(基本料金3,000円を支払うと、時間無制限で1杯50円〜)を用意しています。
「なるべく日常的にワンランクツーランク上のお酒を楽しんでほしい」
一見特殊なこのシステムは、この思いから生まれました。
株式会社HANASAKUは、酒屋を皮切りに、南郷7丁目での出店を経て、現在は新札幌に「酒好き屋 HANASAKU」と「酒屋Bar HANASAKU」の2店舗を展開しています。(※新札幌店は、JRの耐震工事により年内終了予定)
南郷7丁目店では、1杯300円のお酒から、最大で2,000円・3,000円と値段を分けて提供していました。しかし、多く出るのは300円や500円のお酒。本当は飲んでみてほしいお酒も、1,000円を超えると気軽に手を出せなくなってしまい、「知ってほしい」というコンセプトからズレるというジレンマを抱えていたそうです。
そこで、新札幌店ではオープン当時500円に価格を統一。これにより平均的にお酒が出るようになったものの、ある程度の価格範囲内の日本酒や焼酎しか出せないという縛りが発生してしまいました。
「本格的なものを出すんだけど敷居は低く。値段の心配を取り払って純粋に楽しんでほしい…」
2店舗での経験もあり、この思いを形にしたのが現在。3,000円という下駄を履いてもらうことで、例えば一杯1,000円のものでも100円200円にまで下がり、本来Barだと一杯5,000円のウイスキーも1,000円で飲むことができます。すべて原価で提供することが可能となり、飲めば飲むだけお得になります。
オープン後の嬉しい誤算
試行錯誤のうえ生まれたこの料金システムや、酒屋Barというスタイルは、本人が予想もしていなかった嬉しいことを呼び込んでいました!
お客さんの7割が女性
MEGAドンキ狸小路本店の地下にオープンしたことで、ご家族や海外のお客さんも多く来ていただけるようになったのと同時に、なぜか女性のソロ飲みのお客さんの来店が多いことに気づきました。
あるとき理由を尋ねてみたところ、「Barはナンパされる、絡まれる、ちょっと危ないみたいな、マイナスなイメージも少なからずあるけど、居酒屋とかよりは美味しいお酒が飲みたいから興味はあって、ここは店内も明るくて入りやすかった」と話してくれたそうです。
これはまさに「酒屋Bar」の強みが活かされていて、お客さんの中で敷居は低く美味しいお酒を楽しめる場所というコンセプトがしっかり伝わっていることがわかる言葉です。
この手軽さは20代の方も行きつけのBarとして何度も訪れるほど。飲み会の帰りにそのまま来店し、「会社の上司に日本酒Barに連れてってもらったけど8種類しかなかった」なんて話す方もいたのだとか…(笑)
この日も、20代の方が先客で来店していて、初々しい恋愛相談を乾さんにしているのを隣でキュンキュンしながら聞いていました。(無事に告白成功したかなぁ…)
蔵元が本当に飲んでほしいお酒を楽しんでもらえる
蔵元さんによっては、吟醸酒や古酒、珍しい酵母を使用したものや特殊な作り方をしたものなど、こだわり抜いた本当に飲んでほしいお酒が存在します。しかし、一般的に多く出る傾向にあるのはどうしても大衆酒です。
こだわりのお酒はその分価格が上がってしまうため、チャレンジで恐る恐る出すお店もあるなかで、ここでは原価での提供により、値段に関係なく本当に美味しいお酒、蔵元が飲んでほしいお酒が出ます。
初めの一杯を飲んでもらわないことには、おいしさに気づくこともできません。結果的に、同店は蔵元さんの気持ちを汲みながら、このきっかけ作りに貢献していたのです。地元の酒屋さんよりもポンポン仕入れるため、どうしてかびっくりされることもあるそうです。
仕入れについてはこだわりがある乾さん。
「見てるのはどれだけ売れてるかじゃない。味だったり、蔵元さんのこだわりとか、そっちの方が僕的には重要視してる部分。」
売れているものを売るのは素人でもできる。今売れていないものを売れるようにするのがプロの商売というのが乾さんの考えで、お店でよく出る人気のお酒も、某日本酒ランキングサイトではランク外のお酒も多いとのこと。それだけ、知られていないけど飲んだら美味しいお酒が溢れているということですね!
お客さんは手頃な価格でお酒との出会いを楽しむことができ、蔵元さんはこだわりのお酒の購買を促進させることができる。蓋を開けると、まさに三方良しのシステムだったのです…!
お酒の冒険ができるお店
現在、日本酒は1万銘柄を超えていて、蔵の数もおよそ1,600ヶ所あります。さらに毎月のように各蔵から新しい銘柄が誕生しています。
しかし、札幌は特に上位のランキングのものが集まりがちなのだとか。1000銘柄飲んでやっと1%かどうかという世界で、同じお酒をぐるぐる回るのはなんだか寂しい気持ちもしますね。
前述の通り、乾さんの仕入れの基準はどれだけ売れているかではないため、札幌の他店舗でもあまり見られないお酒が多く並びます。
お取引をお願いする蔵元さんからは、「同じ地域でもっと売れているお酒が他にいっぱいある中で、ここにっていうのはだいぶ変わってますね」と言われたこともあるそうです。
惚れたお酒には毎年毎季節手紙を書いたり電話したり、取引が始まるまで3年以上かかった蔵もあるのだとか。お酒へのひたむきな思いによる仕入れによって、オープン当初取り扱い数がおよそ250種類だった銘柄も、今では400種類にまで上り、現在もなお増え続けています。
「これからもバズりや流行りに左右されないお店を継続していきたい」
そんなこだわりの「酒屋Bar HANASAKU」で、あなたのまだ知らないあなたに合うワンランク上のお酒を探してみませんか?
店主おすすめの一杯「球磨焼酎 誉の露」
熊本県は人吉市にある深野酒造で製造される「球磨焼酎」。
そのなかで「誉の露」は、一見地味で特徴もなく、覚えづらそうな名前なのもあってか売れ残ってしまっていました。
ある日、その売れ残りを自分で買い取って飲んでみると、とんでもなく美味しかったという想い出があると話してくれました。
球磨焼酎の本来の特徴は「ずっとだらだら飲める」お酒であること。地元の懇親会に参加した際は、初めの一杯を水割りで頂きつつ、焼き鳥や冷やしトマトと一緒にだらだら飲み会がスタートして、ロックに移行しながら、会の間ずっと飲んでいたそうです。
一口飲んでみると、確かに角がなく、実家で父親がテレビを見ながら肴と一緒に飲んでいそうな、そんな光景が浮かびました。
お店を見渡すと、球磨焼酎をはじめ、熊本に関するグッズが多くみられます。
駆け出しで取引を断り続けられていた酒屋時代に、唯一契約してくれたのが深野酒造さんだったそうです。一時期は「球磨焼酎」のみを取り扱う尖った酒屋でしたが、今ではそれが強みとなり、熊本県を除いて全国一位の取り扱い数を誇り、熊本県庁の方がお忍びで飲みに来たこともあるのだとか。
恩返しの意味も含むこちらの一杯、ぜひお試しください!
店舗情報「酒屋Bar HANASAKU」
TEL | 080-6983-1366 |
所在地 | 札幌市中央区南3条西4丁目12-1 アルシュビルB1 |
アクセス | MEGAドンキ狸小路本店B1レジ裏出入口出てすぐ左 |
営業時間 | 平日 16:00〜23:00(L.O.22:00) 土日祝 14:00〜22:00(L.O.21:30) |
定休日 | 不定休 |
公式HP・SNS | https://www.8739hanasaku.com/ https://www.instagram.com/sakayabar_hanasaku/ |
お店のロゴや店内の至る所にあるユニークなデザインは、奥様のオリジナル!
これを目当てにお店にくるお客さんもいるんだって!
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